2016年

~従業員採用にあたって~

 従業員を採用する際は、どのような条件で働くかをあらかじめ明示した上で労働契約の締結を行っていく必要があります。従業員が安心して業務に専念できるよう適正な労働条件の確保に努めていきましょう。今回は、労働基準法で定められている短時間勤務の従業員に対して採るべき措置、各種保険加入等についても触れていくこととします。

1、労働条件の明示

●確定申告をしなければならない人(主な例)
必ず明示する事項
次に掲げるものは、書面の交付(④の昇給については口頭可)により明示する義務があります。

①労働契約の期間
 無期・有期のいずれかであるかを明示します。有期とする場合は、期間の長さと更新の有無に注意を要します。
 期間の長さは3年を上限(原則)として定めますが、満60歳以上の者との労働契約や厚生労働大臣が定めた一定の専門的知識等を有する者(博士の学位を有する者、公認会計士等)との労働契約は5年を上限とし、有期の建設工事等は事業の完了に必要な期間を労働契約の期間として定めることができます。
 また、期間の定めをする場合は「更新の有無」についてもあらかじめ明示し(「自動的に更新する」「更新する場合が有り得る」「更新はしない」等)、一定の判断基準を設けて更新の可否を決める場合は、その基準(業務量・勤務成績・勤務態度・能力・会社の経営状況等)についても明示します。

②就業場所、従事すべき業務
 就業の場所や業務内容について明示します。例えば、複数の事業所があり、採用時の就業場所から異動をさせる可能性がある場合は、変更が有り得ることをあらかじめ書面にて明示しておくとよいでしょう。

③始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換「始業・終業の時刻」を決めるときは、法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)の範囲となるように定めます。みなし労働時間制や変形労働時間制を採用しているときは、制度の理解を得られるよう丁寧に説明をしていきましょう。
 「休日」については、少なくとも1週間に1回(または4週間に4日)の休みを法定休日として確保します。
 「休暇」は、年次有給休暇や育児・介護休業等が該当します。有期契約や短時間勤務の従業員についても所定の用件を満たしたときには年次有給休暇、育児・介護休業等を請求することができますので、それらの者から請求があったときに付与を拒むことがないよう、勤怠を管理する上司に対しても取得可能な
年次有給休暇の日数を周知する等の対応を行っておくとよいでしょう。

④賃金(退職手当、臨時に支払われる賃金等を除く)の決定・計算・支払の方法、賃金の締切・支払の時期、昇給賃金額を決定する際は、都道府県(または産業)ごとに定められた最低賃金を下回らないようにします。
 最低賃金は1時間あたりの額が定められています。月給者の場合は、月給を1か月平均の所定労働時間で得た金額が、最低賃金として定められた額以上となるように決定します。
 時間外・休日労働、深夜業に対する割増賃金は、労使間トラブルとなることが多い事項の一つですので、労働時間の管理や割増賃金の計算方法があいまいとなっている場合は、未払いの時間外手当等が生じないよう社内制度の見直しを実施していきましょう。
 なお、短時間労働者を採用する場合は、賃金に関連する次の三点についても書面交付により明示します。
・昇給の有無
・退職手当の有無
・賞与の有無

⑤退職に関する事項(解雇の自由を含む)
 定年年齢を定めるときは60歳を下回らないようにし、また、定年到達後の継続雇用について定めるときは、原則として、希望者全員を65歳まで継続雇用する制度とします。
 また、従業員が一身上の都合による退職を考えた際には、何日前に届出をすればよいかを明示しておくとよいでしょう。
 解雇事由についてもあらかじめ明示しますが、就業規則に詳細が書かれているときは、就業規則の該当箇所を併せて提示しておきます。

⑥その他
 短時間労働者を採用する場合は、前記①から⑤のほか、「雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」も明示しなければなりません。この明示事項については、平成27年4月以降に設けられました。


2、公的保険への加入


労働保険、社会保険の取り扱いは次のとおりとされます。
①労災保険
 労災保険は、年齢や労働契約期間の長さ、労働時間の長短に関わらず、原則として全ての従業員が対象労働者とされます。
 なお、後述する雇用保険や社会保険のような採用時の資格取得手続きはありません(退職時も同様)。業務上や通勤途中の負傷、疾病が生じたときは、所定の様式に被災した者の氏名等を記載して請求手続きをすることで保険給付を受けることができます。

②雇用保険
 次の要件を満たした者が被保険者とされます。
・1週間の所定労働時間が20時間以上であること
・31日以上の雇用見込みがあること
 したがって、有期契約や短時間勤務の従業員であっても、要件を満たす場合は被保険者の資格取得手続を行う必要があります。
 なお、法人の代表取締役や65歳以上で新規採用等、一部の者については適用除外とされます。

③社会保険
 健康保険および厚生年金保険の適用事業に採用された者については、被保険者の資格を取得します。
なお、短時間労働者については、次のア、イのいずれにも該当する場合に被保険者となります。
ア 労働日数
1か月の所定労働日数が一般社員の概ね4分の3以上である場合
イ 労働時間
1日又は1週の所定労働時間が一般社員の概ね4分の3以上である場合
 ※この4分の3以上の判断基準は1つの目安であり、該当しない者であっても、就労の形態や内容等を総合的に判断した結果、常用的使用関係が認められた場合は被保険者とされることがあります。
また、被保険者とされない者として、例えば「2か月以内の期間を定めて使用される者」が定められていますが、所定の期間を超えて引き続き使用される場合は、超えた日から被保険者となります。
 短時間の労働契約を締結し、更新を繰り返している従業員がいる場合は、加入手続き漏れが生じているケースがあるため注意を要します。


3、健康診断

 常用使用する労働者は採用時に健康診断を実施(原則)することとされています。
 有期契約や短時間勤務の従業員については、次のアとイのいずれの要件も満たす場合の実施義務が生じますので、該当者がいる場合には、一般の従業員と同様に健康診断を行っていきましょう。
ア・ 期間の定めのない契約により使用される者。期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者、及び更新により1年以上使用されている者。
イ・ 1週間の労働時間数が、同じ事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。

 

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