2016年

~フレックスタイム制の導入~

 多くの事業場では、法定労働時間(休憩時間を除いて1日につき8時間)を超えない範囲で始業と終業の時刻が定められ、労働者は、その定めに基づいて働いています。
 それに対し、フレックスタイム制においては、1日の労働時間の長さを定めず、1か月以内の一定の期間の総労働時間を定めておき、労働者はその総労働時間の範囲で各日の始業と終業の時刻を自ら決めて働くことができます。
 今回はフレックスタイム制の導入および運用方法についてお伝えします。

1、導入要件

(1)就業規則
 就業規則(注)に、始業および終業の時刻を労働者の決定に委ねることを決めます。
 (注) 労働者が常時10人に満たない事業場では就業規則の作成義務がありませんので、就業規則に準ずるものを作成します(労働基準監督署への届出不要)。

(2)労使協定
 次の事項を労使協定により定めます(届出不要)。
①対象労働者の範囲
 対象労働者の範囲は、各人ごと、課ごと、グループごと等様々な範囲が考えられます。
 「全従業員」を対象とせず、「企画部の社員」のように限定することも可能です。
②精算期間
 精算期間とは、フレックスタイム制において労働者が労働すべき時間を定める期間をいい、その長さは、1か月以内に限ることとされています。
 賃金の計算期間に合わせておくと運用しやすいでしょう(例:賃金の計算期間が1か月の場合は、フレックスタイム制の精算期間も1か月とする)。
③精算期間の起算日
 起算日は、毎月1日、16日等のように明確にします。こちらも賃金の計算期間の初日に合わせておくとよいでしょう。
④精算期間における総労働時間
 精算期間における総労働時間とは、精算期間内において労働すべき時間のことで、いわゆる所定労働時間のことをいいます。
 この時間は、精算期間を平均にし、1週間あたりの労働時間が40時間(注)以内になるように定めなければなりません。
 1週間あたりの労働時間を40時間以内とするには、精算期間における総労働時間を、次の条件式により求めた時間以内とする必要があります。
「精算期間の暦日数/7日×1週間の法定労働時間(40時間(注))」
(注)常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)、保険衛生業、接客娯楽業は、特例措置が設けられており「44時間」とすることができます。
「1か月」を精算期間とした場合は、総労働時間を次の時間内に収めることとなります。

⑤標準となる1日の労働時間
 標準となる1日の労働時間とは、年次有給休暇を取得した際に何時間労働したものとして賃金を計算するのかを明確にしておくためのものです。
 なお、フレックスタイム制の対象労働者が年次有給休暇を1日取得した場合には、その日に標準となる1日の労働時間を労働したものとして取り扱うことが必要です。
⑥コアタイム
 コアタイムは、労働者が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯です。
 フレックスタイム制では、始業と終業の時刻を労働者が決定できますが、例えば「11時から15時までは、必ず出勤してもらいたい」という事業場では、その時間をコアタイムとして定めます。
 必ず設けなければならないものではありませんが、設ける時は、その時間帯の開始および終了の時刻を明記しなければなりません。
 コアタイムは労使協定で自由に設定ができ、日によってコアタイムの設定を変えること、コアタイムを分割することも可能です。
⑦フレキシブルタイム
 労働者がその選択により労働することができる時間帯に制限を設ける場合は、その時間帯の開始および終了の時刻を定める必要があります
 (例:始業は7時から11時までの間、終業は15時から20時までの間など)。
 この場合、フレキシブルタイムの時間帯が極端に短い(例:30分のみ)制度や、フレキシブルタイムの時間帯が30分単位となっていて、その中から始業または終業の時刻を選ぶような制度は、始業および終業の時刻を労働者が自主的に決定しているとはいえず、フレックスタイム制の趣旨に反しますので注意が必要です。

2、労働時間の把握

 フレックスタイム制は、始業および終業の時刻を労働者の決定に委ねる制度ですが、使用者側が「労働時間の管理をしなくてよい」とされているわけではないため、実労働時間を把握する必要があります。
 過重労働による健康障害防止にも十分留意しましょう。

3、賃金の精算

①超過の場合
 実労働時間が、精算期間の中で労働すべき時間を超過する場合は、超過時間に対する賃金を支払います。
 前述(1(2)④)の法定労働時間の総枠を超える労働に対しては、割増賃金の支払も必要となることに注意を要します。
②不足の場合
 労働時間に不足が生じた場合の対応の1つとして、賃金支払時に不足した労働時間分の賃金を精算(控除)する方法があります。
 もう1つは、所定の賃金は当月分として全額を支払い、不足の時間分を翌月の総労働時間に加算して労働させる方法があります。
 翌月の総労働時間に加算する場合、加算できる限度はその法定労働時間の総枠の範囲内となります。
 例えば、1週間の所定労働時間を法定労働時間(原則40時間)より短く定めている事業場では、1か月の所定労働時間が法定労働時間の総枠より少なくなります。このようなときに、前月の不足分を当月の所定労働時間に加算(法定労働時間の総枠を限度)して労働させることができます。

4、時間外労働協定等

 フレックスタイム制を採用した場合の法定時間外労働は、1日および1週間単位では判断せず、精算期間における法定労働時間の総枠に超えた時間が該当することになります。
 従って、時間外労働の労使協定についても、1日の延長時間について協定する必要はなく、精算期間を通算しての延長時間および1年間の延長時間の協定をすれば足りることになります。

5、休憩時間

 始業および終業の時刻を労働者に委ねている場合であっても、休憩時間については労働基準法により定められた原則通り(一斉付与)の扱いをします。
 一斉に付与をしない場合は、休憩一斉付与の適用除外に関する労使協定を締結する必要があります。
 この労使協定は所轄労働基準監督署への届出をしなくてもよいこととされています。
 なお、運送業など一定の業種は一斉休憩の適用を除外されており、その場合は労使協定の締結は不要です。

 

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