税務ニュース

~中小企業のためのリスクマネジメント~

 
①リスクの確認
 ↓
②測定
 ↓
③処理技術の選択
 ↓
④実施
 ↓
⑤統制

 企業は、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を主とした各種の経営資源を活用して商品やサービスを提供し、利益を生み出す活動を行っていますが、その活動は様々なリスクの上に成り立っています。
 古くからある「ヒト」「モノ」「カネ」などにかかわるリスクに加え、ITの普及による情報・技術面でのリスクが最近では発生してきており、サイバーテロなど今までになかったリスク対策も考えなくてはならない時代に突入しています。今後も企業をとりまく厳しい経済情勢が続く中、消費者からはより一層高い水準のリスク対策が求められるでしょう。企業が生き残っていくためにも、業績をあげるだけではなく、企業活動に伴うさまざまな危険を最小限に抑える管理運営方法、すなわち、リスクマネジメントが重要となってきています。


★リスクとは?

 リスクとは、単に「危険」という現象だけでなく、「損失発生の可能性」あるいは「今後起こるかもしれない不確実な事象」という意味があります。さらに、このリスクは大きく分けて次の二つに分類されます。
①純粋リスク・・・損失のみを発生させるリスク
 たとえば、災害、地震、水害、自動車事故、労働災害、病気、テロなど。
②投機的リスク・・・利益または損失を発生させるリスク
 たとえば、為替変動、インフレ、デフレ、法律改正、新商品開発など。

★リスクマネジメント

 リスクマネジメントとは、リスクを組織的にマネジメントし、ハザード(危害の発生源・発生原因)、損失などを回避もしくは、それらの低減を図るプロセスを指します。①リスクの確認→②測定→③処理技術の選択→④実施→⑤統制という五段階のプロセスで進められます。確認されたリスクに対してどのくらい事故が起こりそうか(発生頻度)、起こった場合の予想損失額(損失規模)を測定して処理技術を選択します。一般的には二通りの方法があるといわれています。

①リスクコントロール
 リスクコントロールとは、損失の発生頻度(確率)や深刻度(規模)を軽減させる、あるいはリスクそのものを変えることをいい、次の五つの手法が考えられます。

・回避・・・初めからリスクを生じさせない、または生じているリスクをゼロにする。たとえば、年に一回社員旅行を行っているとした場合、社員旅行自体をやめることで、事故や災害、宴会での食中毒などのリスクをなくすことができます。また、社員旅行を二回に分けて、もしもの場合のリスクを半減させる企業もあります。

・損失制御・・・損失の発生頻度や損失の規模を小さくすることです。たとえば、現場責任者の教育や避難訓練などでリスクを軽減できます。

・結合・・・損失にさらされている危険単位の数を増加させることによって、リスクマネージャーのリスク予知能力を高める。たとえば、車の故障に備えて保有台数を増やしたりします。

・分離・・・損失にさらされている人・物・活動などの危険単位をより細分化すること。たとえば、工場などを複数建設して地震などの災害時の完全ストップを避けてリスクを分散させます。

・移転・・・損失にさらされている物や活動を他の個人や法人に移転させること、または法律や契約から発生する責任を免除又は制限させる条項によってリスクを移転させること。リースやレンタルなど自分で保有しないことにより、リスクを負わないようにすることも手法の一つです。

②リスクファイナンシング
 リスクファイナンシングとは、リスクによってもたらされる経済的な損失を軽減するものをいい、リスクの発生そのものは変わりません。

・保有・・・リスクの財務的影響を自ら負担する。家庭においても、いざという時に備えて預貯金をしていると思いますが、会社経営では「引当金」で処理することもあります。費用は自己負担ですが、損失が保有の範囲内であれば、破産や倒産は免れます。

・移転・・・リスクの財務的影響を他者に負担させる。保険に入って損失に備えるのが一般的です。企業をとりまくリスクは、前記以外にも多岐にわたり、たとえば、社長等の死亡などにより会社が倒産してしまうという経営者個人の一身上のリスクもあります。火災や盗難などによる財産上のリスクや賠償責任のリスクもあります。前記の方法を選択、あるいは組み合わせ、事業の活性化・安定化へ手を打たなければなりません。こうした一連の作業は、期間を定めて実施することが大切で、期ごとや半期ごとに見直す習慣が必要です。

★保険設計の見直しが重要

 こうしたさまざまなリスクから会社を守るため、最も確実なコントロール手法の一つは一定の保険への加入が考えられます。ただし、適切なリスクマネジメントのためには、会社にとって新たに必要とする保険はあるか、または不必要な保険は無いか、保険料にムダはないかを必ずチェックする必要があります。つまり、保険設計の見直しが重要となります。
 また、保険契約には、当然ながらお金がかかることであり、移転可能なリスクをすべて保険でまかなうことは非合理な場合があります。そこで、二重三重にリスク対策を組み合わせて保険設計を行います。たとえば、地震を想定した場合、①耐震設備の充実(リスク軽減)と②地震保険の契約(リスク移転)を組み合わせる場合や、③保険契約時に免責金額を設定(リスク移転&リスク保有)する場合などが挙げられます。前記の保険設計で、リスク分析と評価を行い、優先すべきリスクを明らかにして、コストの最適配分を考える必要があるでしょう。
 さらに、保険金の支払のタイミングも十分に把握しておく必要があります。保険金は原則として損害額が発生してから支払われます。したがって、保険金が支払われる前に資金繰りが悪くなり倒産するという事態も想定されるので、こういったリスクも保険の保有対策と平行して考えていく必要があります。
 中小企業では、節税目的のために同族オーナーを被保険者とする保険設計が行われることがよくみられます。節税対策を行う会社ということは、儲かっている会社です。オーナーにもしものことがあると、会社は一大事ですが、まずはそれ以外に考えられるべきリスクを全て洗い出し、掛け捨てでもいいのでそのリスクを軽減すべき保険に入るのが本筋かと思われます。自社のリスクをしっかり把握し、そのリスクを軽減すべき対応を検討し、そのリスクをカバーする保険に加入し、それでも余裕がある場合に節税を主とした保険に入るという順序で検討することが大切です。
 また、昨今では中小企業の海外展開が加速傾向にありますが、海外現地での経営環境の変化等に対応するため、進出先での事業再編(事業の縮小・撤退、第三国への移転等)に取り組むケースも増加しています。中小企業庁では、海外での事業再編に取り組んだ中小企業の事例を収集し、併せて、海外事業の再編を行うに際して留意すべき事項、中小企業の海外事業再編動向について取りまとめ、2015年6月に公表しています。
 海外進出に当たっては進出国のリスク事象を調査し、対処方法を検討する必要があります。中小企業の情報不足、ノウハウ不足を補うために、独立行政法人中小企業基盤設備機構は海外リスクマネジメントマニュアルを2016年3月に公表していますので、これらを海外進出の際に参考にするとよいでしょう。

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